【連載】Vol.003-3 サッカー香港代表・中村祐人という生き方
2018年6月まで中村祐人が所属していたのがTaipo FCである。つまり、レンタルながら古巣への復帰ということになる。Taipo FCは昨シーズンのリーグ王者。ディフェンディング・チャンピオンとして臨む今シーズンは監督も選手も大きく変わり、新たなチームとして出発している。また、昨季のリーグ王者のためACL(アジア・チャンピオンズ・リーグ)への挑戦権もある。新たなチャレンジとして申し分ない環境だろう。
では、傑志はなぜレンタルで中村祐人を放出したのか。残念ながらチーム関係者一人ひとりに話を聞いたわけではないので真相は不明だが、少なくとも奇妙に思えるのはシーズンが開幕したにもかかわらず、中村祐人がベンチ外になっていたことだ。もしも試合で起用する考えがないのであれば、監督やクラブは開幕前に選手本人にそれを告げる必要がある。選手にとっては酷な通知だが、少なくとも試合に出なければ評価されないプロサッカーの世界では、選手は自分を試合に使ってくれるクラブを探すことだろう。そう、まさに今回の中村祐人のレンタルのように。なぜ開幕から2節が経ってもクラブがそれをしなかったのか。ここからはあくまで推測だが、中村祐人の起用法について非常に消極的な者がいる一方、今は試合に使わずともシーズンを通して考えれば必ず彼の力が必要になる時が来るから、クラブに留めておくべきだという者がおり、どうも中村祐人はそんな首脳陣の思惑の間(はざま)に陥ってしまったと考えられる。しかしファンにとっては極めて失礼な話で、中村祐人の新シーズンを心待ちにしていたサポーターたちは、開幕戦のベンチ入りメンバーを見て驚き、第2節のメンバーを見て異常事態を悟ることとなってしまった。そして、何がどうなっているのか…という困惑の中、突然のレンタルの発表を知ることとなる。
続く