【試合レビュー】中村祐人がゴール!リーマンvs Happy Valley
2020年9月21日(月)。
中断状態にあった香港プレミアリーグ19-20がついに再開された。欧州ではすでに19-20シーズンを終えて新シーズン(20-21)が始まっているが、香港のスケジュールは今年の10月中に19-20シーズンを終了し、11月から新シーズンを開始するというものだ。
中村祐人が所属するLeeman(リーマン)は昇格組のHappy Valleyとの再開初戦。フォーメーションは4-2-3-1で中村祐人はセントラルMF(トップ下)で先発した。大雨が降る中、無観客で行われたこの試合はon.ccで中継されたため、私も映像で観戦した。
中村祐人が貴重な2点目のゴールを決め2-0でリーマンが勝利を飾ったこの再開初戦。リーマンの印象は「非常によく組織されたチーム」というものだ。オーソドックスな4-2-3-1で、ボールをポゼッションしながらスペースを作り出し、右、左、中央といずれかに偏ることなく、相手の隙を見つけて攻め込む。ただし、ポゼッションとはいってもショートパスをつなぐだけでなく、中盤の底からサイドへロングボールが入ることもあれば、中央へのくさびのパスが入って攻撃にスイッチが入るなど、決まったパターンがない。これはつまり相手にとってはどうボールを運んでくるのか読みにくいということだ。攻撃では2列目の左に入ったブラジル人のジバニウトンはスピードがあり積極的にサイドからドリブル突破を仕掛ける。事実、前半5分に早々とあげた先制点は彼のドリブル突破からのセンタリングがアシストになった。また2列目の右に入った香港代表の鄭兆均はプレースキックを任されているテクニカルなレフティで、この試合でも惜しい直接フリーキックを蹴っていた。ワントップにはフランスのエンドリが入り、時にくさびのパスを受け、時に裏を狙いとCFらしい動きを繰り返していた。
そしてこれら攻撃陣を操るのが中村祐人である。中村祐人を獲得し、リーグ再開の初戦で彼をセントラルMFで起用したリーマンの陳暁明監督に拍手喝采を送りたい。理由はシンプルで、そこが中村祐人の総合力がもっとも発揮されるポジションだし、勝利に近づけるからだ。事実、この試合でも確実に中村祐人がこの位置に入ったからこそのプレーやリズムが光っていた。
ボール回しの時も、シンプルにワンタッチでつなぐこともあれば、時に中村祐人は中盤の底まで下がってボールを受け配給をすることもある。球離れがいいのでチームにリズムがもたらされる。また、前半20分には惜しくもオフサイドになったが、味方からの縦パスを相手DFラインとボランチの間で受け、ワンタッチで裏へラストパス。反応したエンドリがオフサイドになったが、こういうスーパープレーをごく当然の如く、淡々とやってしまうのが中村祐人なのだ。そして守備でもその実力をいかんなく発揮。前線からのプレスは当然として、攻め込まれた時にはしっかりと空いたスペースを埋めていた。圧巻は前半24分。敵陣でボールを奪われたリーマンだったが、中村祐人が読みの良さを活かしてサイドに追い込まれた相手のパスをスライディングタックルで奪取したのだ。攻撃であれだけリズムを作り、質の高い動きで攻撃を操りながら、ここぞという時の高速プレスと強烈なタックル。まさに中村祐人というプレーヤーの実力を余すところなく見せつけていた。チームとしても高い位置で奪えるときは刈り取る、奪えない時は引いてしっかりブロックを張るという、迷いのない徹底されたコンセプトで安定した守りを見せていた。
そして何より60分のゴールだ。後半に入り大雨はさらに強まり、さながら豪雨というべき状態。ボールが転がりにくくなり、チームとしてはこの辺りで追加点を奪い、有利な状況を広げたいところ。そこで飛び出したのが祐人ゴールだ。
味方がシュートブロックしたこぼれ球を自陣中央で拾った中村祐人がドリブルでカウンターを発動。選択肢は2つ。右にエンドリ、左には替わって入った李康廉が走っている。敵陣に入りセンターサークルを超えると中村祐人は右を選択。優しいタッチでパスを送ると、エンドリはツータッチで中央へ折り返す。パスを受けた李康廉はワンタッチで中央に走り込んできた中村祐人へ。少しマイナス気味になったものの、そこは長年ストライカーとして経験を積んできた中村祐人だ。倒れ込みながらも左足で叩き込んだ。実は中村祐人はパスを出した後、首を振って左に走り込んでいた李康廉の位置を確認している。そして抜群のタイミングで中央へ走り込み、ゴールを決めたのだ。カウンターを確実に仕留めることができたのは、3人の呼吸はもちろんだが、カウンターを発動して絶妙なタイミングでパスを供給し、絶妙なタイミングで走り込んだ中村祐人の高いインテリジェンスとスキルがあった。その証拠に、流れるようなカウンターは誰ひとりリズムが崩れることなく、ラストパスだけがわずかにマイナスになっただけだった。それも、豪雨というピッチコンディションの中でである。「チョンチュン・ヤウヤン!!!!」(広東語で中村祐人)という実況アナウンサーの絶叫は、滞りなく、美しく流れていったそのカウンターを仕留めた中村祐人への最大級の賛辞だろう。
中村祐人は65分で交代。試合はそのまま2-0で終了。長く実戦から離れていたのだから、どの選手にも無理はさせられない。これから試合を積み重ねるごとに、個人のコンディションも、またチームの連携も深まってくることだろう。
それにしても、である。移籍先でのデビュー戦でゴールを奪うという、最大にして最高の結果を出した中村祐人。思えば傑志に移籍した時も開幕戦でありデビュー戦にてチーム2点目のゴールを決めているし(奇しくもこの時の相手がリーマン!)、さらに遡れば、プロとして初めて契約したペガサスでも自身のデビュー戦でいきなりゴールを決めてみせた。移籍で新たにやってきた選手に対して、当然周囲は「こいつはどこまでやれるのか?」と好奇や懐疑の目を向けてくる。それに対する最大インパクトの回答、つまりゴールで応える。中村祐人がリーグ再開からやっぱり魅せてくれた。
結果を出し、ファンを魅了する。中村祐人はやはり、正真正銘のプロフェッショナルである。
中村祐人名言「代表チームを目指せるということが、サッカー選手としてここまで楽しいものだとは、思ってもみなかったです」
「まったくありません。あれがあったから再び香港に戻れましたから。そして戻ってこられたからこそ、妻と出会えて、結婚できましたから。今、香港で本当に楽しんでいるんですよ。しかも香港代表を目指せるところまで来ている。代表チームを目指せるということが、サッカー選手としてここまで楽しいものだとは、思ってもみなかったです」
ポルトガルで後悔はあったか?と聞かれて。
「サッカー香港代表 中村祐人という生き方」より抜粋
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中村祐人名言「僕自身はまったくその気はなかったです」
「代理人のところには、翌シーズンもポルティモネンセでという話は来ていたみたいですけど、僕自身はまったくその気はなかったです。しかも、ポルティモネンセはそのシーズンで昇格を決めて、翌シーズンはポルトガル一部でプレーすることができたにも関わらず。とにかくポルトガルから逃れたかった」
ポルトガルでのシーズン終了後について聞かれて。
「サッカー香港代表 中村祐人という生き方」より抜粋
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中村祐人名言「なんかもう、すべてが辛かったです」
「練習にいくのも嫌になりました。引きこもりがちになり、外出は練習場と家の往復と夕食の時くらい。家族や友人も近くにいなくて、ポルトガルで一人でしたしね。なんかもう、すべてが辛かったです」
ポルトガルでの不遇時代について聞かれて。
「サッカー香港代表 中村祐人という生き方」より抜粋
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中村祐人名言「同居人のブラジル人は英語が話せなかったから、僕も必死でポルトガル語を話しました」
「サッカー香港代表 中村祐人という生き方」より抜粋
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中村祐人名言「それはやはり興奮しましたよね。ポルトガルでプレーできるチャンスですから」
「それはやはり興奮しましたよね。ポルトガルでプレーできるチャンスですから。それに、とにかくあの年(2009年)はもう怒涛のようでした。青学を卒業する前からもうペガサスでデビューしたり、岡野さんと一緒のチームでプレーできたり、12ゴールを挙げたり、そこからのポルティモネンセですからね」
欧州挑戦について聞かれて。
「サッカー香港代表 中村祐人という生き方」より抜粋
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中村祐人名言「たとえ二部でも、ポルトガルで活躍すれば、それなりに注目されます」
「なかったですね。香港で12ゴール決めたからといって、サッカー界では別段、注目されません。でも、たとえ二部でも、ポルトガルで活躍すれば、それなりに注目されます。それに、純粋に自分の実力がどれだけ通用するのかを試してみたかったですしね」
「サッカー香港代表 中村祐人という生き方」より抜粋
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